大阪ローカルニュース

2026/07/06

花火大会が消えていく時代に、ドローンショーが地域の祭りを変えつつある

夏といえば花火大会、というイメージはもはや「当たり前」ではなくなりつつあります。全国各地で花火大会の中止・縮小が相次ぐ中、地域の祭りに新しい選択肢として浮上しているのが「ドローンショー」です。今年、大阪府摂津市の「第50回摂津まつり」でも初めてドローンショーが実施されることになりました。これは単なるイベントの話題作りではなく、地域の夏まつりが直面している構造的な変化の一端を象徴しています。

花火大会がなくなっていく、その理由

2023年には全国で49件の花火大会が中止になり、2025年も28会場以上が中止を決定しています。その背景として最もよく語られるのが費用の高騰です。打ち上げ花火の材料となる火薬はウクライナ情勢や円安の影響を受け、2024年時点でコロナ前比約1.8倍の価格に跳ね上がりました。

ただし費用の問題は花火そのものよりも、警備にあります。2022年の梨泰院雑踏事故以降、群衆事故への意識が世界的に高まり、日本でも屋外イベントの警備基準が大幅に厳格化されました。大規模な花火大会では警備費が総開催費の約6割を占めるケースもあり、島根県の松江水郷祭ではコロナ前と比べて警備費だけで約2.6倍になったと報告されています。花火の費用よりも「集まった人をどう守るか」のコストが先に限界を迎えているわけです。

加えて、住宅地に近い会場では花火の燃え殻が屋根や車に落ちるとの苦情も増加。徳島県鳴門市ではこの問題を理由に2024年に花火大会を中止しています。花火大会の中止は地方の小さな自治体ほど深刻で、中止になる大会の約7割は人口5万人以下の規模です。

ドローンショーは「安い」のか

こうした状況で注目を集めているのがドローンショーです。ただ「花火の代わりに安くできる」という単純な話ではありません。費用の目安はドローン1機あたり3万円前後と言われており、50〜100機規模で150万〜300万円、200〜300機規模で600万〜900万円ほどが一般的な相場です。機体費用のほかに、アニメーション制作費・許可申請費・保険・現地オペレーター費用などが加わります。

数千万円規模の花火大会と比べれば小〜中規模ではコストを抑えられる可能性がある一方で、500機以上の大規模ショーになると花火と変わらない、あるいはそれ以上の費用になることもあります。「ドローンショー=安い」ではなく、「花火大会を支えていた警備費・保険・燃え殻対策のコストが不要になる分、トータルで運営しやすくなる」という見方のほうが正確です。

地域の祭りにとって、何が嬉しいか

コスト面以上に、地域の祭り主催者にとって魅力的なのは運営上のハードルの低さです。

花火は火薬を扱うため打ち上げ場所の確保・保安距離の設定・専門業者の手配が必須で、準備に数か月を要します。一方ドローンショーは住宅密集地でも比較的実施しやすく、煙も燃え殻も出ないため苦情リスクが低い。爆発音がないため、小さな子どもや聴覚過敏の方、ペット連れの来場者にも配慮しやすいという点も見逃せません。

演出面の自由度も高く、LEDライトによってキャラクターや地域のロゴ、メッセージをフルカラーで空に描くことができます。さらに同じプログラムを何度でも再演できるため、記念の節目や複数日開催のイベントにも向いています。万博(大阪・関西万博)が毎晩1,000機超のドローンショーを実施したことで、国内での認知度と期待値が一気に上がったことも追い風になっています。

課題はある。「花火の感動」は別物だから

もちろん課題もあります。ドローンショーは花火の「轟音・爆発・光の拡散・熱」という五感を揺さぶる体験とは別物です。花火を見慣れた人にとって「感動が違う」という声があるのは正直なところで、特に大規模な花火大会を毎年楽しみにしてきた地域では代替への抵抗感が生まれることもあります。

天候リスクも残ります。雨量2mm以上・強風・雷などの条件では安全上の理由から中止になるため、花火同様に開催可否の不確実性はゼロではありません。法規制も複雑で、人が集まるイベント上空での飛行は航空法上の許可申請が必要なうえ、対応できる事業者の数はまだ限られています。地域の祭りが「やってみたい」と思っても、すぐに実現できる環境が整っているかどうかは地域によって差があります。

それでも、広がっていく理由

それでもドローンショーを選ぶ自治体や地域団体は増えています。川崎市みなと祭り、長野県佐久市のバルーンフェスティバル、大分県別府市の記念イベントなど、全国で採用事例が積み上がってきました。これらに共通するのは「記念の節目」というタイミングです。花火大会をゼロから立ち上げるよりも、周年記念などの特別な機会を切り口にドローンショーを初導入し、地域の話題をつくるという使い方が定着しつつあります。

花火大会が厳しい状況にある地域ほど、「そもそも夏に夜空を彩るものを、どう用意するか」という問いに向き合わざるを得なくなっています。ドローンショーはその問いへのひとつの現実的な答えになりつつあるのです。

摂津まつり、今年は節目の第50回

そうした流れの中で、大阪府摂津市の「第50回摂津まつり」が今年初めてドローンショーを実施します。1976年から続く摂津市の夏の風物詩が、半世紀の節目に新しい試みを加えました。開催は8月1日(土)・2日(日)。ステージイベントや盆踊りも行われる地域密着の祭りで、ドローンショーは夜空を彩るメインコンテンツとして予定されています。

「地域の祭りでもドローンショーを」という選択が、もはや一部の大都市だけのものではなくなってきたことを、この摂津まつりの取り組みは示しています。