大阪ローカルニュース

2026/07/13

年に一夜だけ——5000本のろうそくが箕面の滝道を灯す理由

7月25日の夜、大阪・箕面市の滝道に約5,000本のろうそくが並びます。阪急箕面駅前から箕面大滝まで続く約2.8kmの山道が、揺れる炎でつながれる一夜——「みのおキャンドルロード」。毎夏のサマーフェスタ箕面公園の中でも最大の見どころとされるこのイベントは、開催時間がわずか2時間(19時〜21時)、年に一度だけの体験です。なぜそんな「手間のかかる夜」が41年も続いているのか、その理由を探りました。

準備は午後2時から始まる

当日、滝道に灯りが入るのは夜7時です。でも「みのおキャンドルロード」の一日は、もっとずっと早くに始まっています。

箕面市観光ボランティアガイド(MVG)のスタッフたちが準備を開始するのは午後2時過ぎ。総勢40名が炎天下の滝道に繰り出し、ろうそくを一本一本セットしていきます。設置だけでなく、点灯、燃焼の管理、消灯、後片付けまで——MVGが担う作業は丸一日分にのぼります。

一般の点灯ボランティアも60名ほど参加します(事前申し込み制)。地元の市民が、滝道の一角に自分の手でろうそくを灯す体験ができます。その手触りが、このイベントの質感を決定づけています。

主催はサマーフェスタ箕面公園実行委員会(箕面市が関与する官民共同体制)ですが、実質的な担い手はMVGと地域の市民たちです。箕面市・観光協会・地元コミュニティFM「タッキー816」・商店街・地域の寺社——複数の主体が異なる役割を担いながら、この一夜を成立させています。「タッキー816」はキャンドルロードの夜だけ公開放送を行うほどで、地域全体が祭りの一部として機能しています。

放置竹林の竹が、灯りになる

キャンドルロードに沿って、所々に竹灯篭が配置されています。これを手がけるのは「箕面の森のふれあい広場運営委員会」。竹灯篭の素材として使われているのは、地域の放置竹林から伐採した竹です。

放置竹林は全国的な問題です。管理されなくなった竹林は隣接する森に侵食し、在来植物を圧迫し、生態系を乱します。箕面市でもその問題は例外ではありませんでしたが、ここでは伐採した竹が灯篭の素材として「使われる場所」を得ています。山を守るための作業が、祭りの演出になる——地域課題と地域の祝祭が連動する好循環が、滝道の一角で静かに機能しています。

竹灯篭は山麓保全活動助成金の支援を受けて制作されており、環境保全の文脈と地域イベントの文脈が自然なかたちで結びついています。竹を伐り、灯篭を作り、滝道に並べる——その工程のひとつひとつに地域の人の手が入っています。

コロナで止まり、それでも戻ってきた

サマーフェスタ箕面公園の始まりは1986年。2026年は第41回を迎えます(前身の「みのお公園納涼」まで遡れば、1934年が起源とされています)。みのおキャンドルロードはその中核プログラムとして長年続いてきましたが、2018年は台風、2020年・2021年は新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされました。

2022年、運営は決断します。スタッフを65歳未満に限定し、規模を縮小し、レイアウトも変更したうえで、それでも開催する道を選びました。「3年ぶりの開催」として地元メディアに取り上げられたこの年、完全な形ではなくとも、灯りを消さないことへのこだわりが見えます。

そして2023年、「4年ぶりのフルスペック開催」として完全復活。ボランティアも、来場者も、以前の姿で滝道に戻ってきました。コロナが奪ったものは多かったけれど、箕面の滝道からろうそくの灯りが消えた夜は、2年間だけでした。

まちより7℃涼しい夜に、5,000本の炎を

箕面大滝は落差33mを誇り、「日本の滝百選」に選ばれた名瀑です。大阪梅田から阪急電車で約30分という近さにありながら、夏の気温はまちなかよりおよそ7℃低い。明治の森箕面国定公園の豊かな緑が生み出す天然のクールスポットです。

サマーフェスタ期間中(7月5日〜8月31日)は毎晩、大滝と滝道がライトアップされ、「都市近郊の夏の避暑地」として多くの来訪者を集めています。みのおキャンドルロードは、その夏の中の「一点」——年365日のうちたった一夜だけに設定されることで、特別な時間として機能しています。

今年は瀧安寺の観音堂へのプロジェクションマッピング(7/25・8/15)、タッキーキャンドルナイト、カルピス×箕面ビールのコラボグルメなども予定されており、ろうそく以外の光と体験も加わります。箕面の夏の夜が、いくつもの層で彩られる一夜になりそうです。

手間があるから、揺れる

ろうそくには特別な性質があります。LEDとちがって、すべての炎が少しずつ異なる揺らぎ方をする。風が吹けば傾き、雨が降れば消える。安定しないからこそ、一本一本に誰かの手間がかかっています。

みのおキャンドルロードの5,000本も、それぞれに設置した人がいます。炎天下で午後2時から準備を続けた人が、消灯まで見届けた人がいる。放置竹林の竹を灯篭に変えた人が、30分だけ手を貸したボランティアがいる。その蓄積が、毎年7月の箕面の夜をつくっています。

41年間、形を変えながらも続いてきたのは、その手間を引き受ける人たちがいたからでしょう。今年の7月25日夜も、そのろうそくは灯ります。

(情報元:箕面市観光ボランティアガイド公式サイト、箕面市公式報道資料「第41回サマーフェスタ箕面公園2026」、みのおNOW、箕面山なみネット)